ドキュメンタリー映画『ディア・ピョンヤン』(2005年)、フィクション映画『かぞくのくに』(2012年)などで、自らの家族の姿を通して、朝鮮半島と日本の歴史、そしてそれらに翻弄されながら生きる在日コリアンの姿を捉えてきたヤンヨンヒ監督。「スープとイデオロギー」は、監督の母が主人公のドキュメンタリー映画だ。
作品の冒頭で母の口から語られるのは「済州島四・三事件」の記憶。当時18歳だった母は事件の体験者であったことを語り始め、娘も知らなかった人生が明かされていく。
作品では「済州島四・三事件」がアニメーションで描かれている。解説などではなく、アニメーションで描かざるを得なかったわけに思いを馳せてもみる。そこには母の、家族の記憶から歴史を見つめることへのこだわりがあるのではないだろうか。そして、描くことができないこと、沈黙として表現せざるを得ないこともまだまだたくさんあるのだろう。
「スープとイデオロギー」。タイトルには「思想がちがっても、一緒にごはんを食べよう」という思いが込められているそうだ。
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