今月のいちおし!5月 New!

はざまのわたし

著者 深澤潮

発行 集英社インターナショナル 

2,310円





                          衣笠尚貴

 国籍によるパスポートの違いがタイトルの「緑と赤」。在日一世の父の遺品のノートからその半生を辿る「海を抱いて月に眠る」。そして著者自らのアイデンティティと家族の歴史、その背景に見え隠れする日本社会の構造を描いた「李の花は散っても」。気づけば多くの作品を読んできた。

 そして今回いきついた「はざまのわたし」。今回の作品は著者であるわたしがつねに感じてきた違和感と劣等感の正体を、「食」を手がかりに解き明かしていく連作エッセイ。キムチ、すし、ゆで豚(ポッサム)などおいしそうな食べ物の名前が並ぶタイトル。そこには若干異質とも思える「カップ麺」と「ケンタッキー…」の文字も。

 エッセイだとわかってページをめくっても、気が付けば小説のように読み進めてしまう。強烈な個性を放つ両親、ふたつの国の文化の違い、そしてアイデンティティの葛藤が繰り広げられるその世界に、深く深く引きずり込まれていく。しかしながら、それらが決して暗く重苦しいばかりでないのは、著者自身に向けられたツッコミのおかげだろうか。

 在日コリアンである一人の物語として受け取りながら、しかしながらただ消費するだけではいけないような感情がいまも頭のなかを駆け巡っている。

 


 

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