今月のいちおし!11月

悪い言語哲学入門

著者 和泉 悠
発行 ちくま新書 924円




福寿みどり

 そもそもタイトルの「悪い」という言葉は、なににかかっているんだろう。

 ことばだけを見れば、どう考えても誉め言葉のはずが、どんな状況でだれがだれに言ったかによっては悪口にもなる。うーん、相変わらず「ことば」はむずかしい…

 本の内容は書き出せばきりがないのだけれど、今回はあえて「ヘイトスピーチ」について解説されている個所を引用します。「ヘイトスピーチのさまざまな側面は、ランクづけするという根本的機能から派生的に理解できる」「害獣や害虫などすでに存在するランキングを利用すれば手間が省ける」「私たちは意見の提示ではない加害行為を言論とみなして擁護する必要はない」とし、「聞き手が序列の存在を拒否するとしても、差別的表現が繰り返し使われるということは、お前たちは低い立場にあるのだ、序列があるのだと共有基盤に繰り返し押し付けられること」「差別的発言が、同列に位置づけられるべき集団を低くランクづけるような効果を持つならば、それは話者の意図と無関係に何らかの制裁の対象となるべきでしょう」「ヘイトスピーチの可能な規制や、人権を侵害する言語使用を批判するとき、私たちは蒸気船やタンカーの造船技術・運航規則・免許制度について話している」なぜなら「タンカーの操縦に規則なんていらない。大事なのは安全に運転しようとするそれぞれの意識だ」とはならないからだ。さー、来るべきヒューマンライツセミナーと人権フォーラム・人権のつどいにそなえ、予習になったかな。

 

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