今月のいちおし!6月

「鳥の劇場」



福壽みどり

ずーっと気にはなっていたものの、なんとなく訪れるチャンスがないままだった「鳥の劇場」。「イワンのばか」が上演されるということで行ってきました。上演を決められたのは、ロシアによるウクライナ侵攻が始められるよりずっと前。本屋大賞になった「同志少女よ、敵を撃て」も、こんな世の中になるとは思わずに書かれたものですが、両者とも知らず知らずのうちになにかを察していたのかもしれません。上演の合間の休憩に主宰の中島諒人さんとお話をすると、「『イワンのばか』もそうだが、混迷の時代に後世に語り継がれる多くの作品が生まれている」という趣旨のことを教えてくださいました。そんな時こそ人間の本能が研ぎ澄まされるのかもしれませんが、でもやはり平和な時代を過ごしたい。そこで、はたと思いだすのが「夜と霧」の最初の訳者霜山徳爾さんが新訳版の出版にあたって書かれた「新訳者の平和な時代に生きてきた優しい心は、流麗な文章になるであろう」という言葉。「夜と霧」も「イワンのばか」も、私はお話の本質をつかめているのだろうか。私も、戦争を知らない世代ではあるけれど、最前列で熱心に見ていた小さな子どもたちは、どんな感想をもったのだろうか。

 「表現の自由」というけれど、それより「表現は自由」だと感じた、鳥の劇場の熱を感じるアツい1日でした。

 

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