今月のいちおし!1月

「N」

道尾秀介 著

                             集英社(1870円税込)

福壽 みどり

名前は知っていたけれど、道尾秀介の作品を初めて読んだ。帯に書かれた「全六章。読む順番で、世界が変わる。あなた自身がつくる720通りの物語」という言葉にひかれたからだ。本の最初に、それぞれのお話の導入部分が書かれていて、そのなかで気になったものを選ぶ仕組みだ。といいつつ、あまり深く考えず1話目を読み始めてしまった。そして、いきおいのままに6話を読み終えてから、「読む順番が違えば読後感はちがったのだろうか。登場人物への心の入れ込み方は変わっただろうか…」と悩む。今となっては、ストーリーが頭に入っているので、順番を変えても印象変わらないかもというのが率直な気持ちで、だからこそ最初にもう少し吟味すればよかったとちょっとだけ後悔。

本のつくりもおもしろい。もともと「N」は上下さかさまにしてもNと読める。文章は、1話おきに天地がひっくり返る。作者の名前も表紙の上と下に書いてある。イメージが難しい方は、書店かインターネットでご確認を。本の仕掛けもさることながら、「DV」「ひきこもり」「ターミナルケア」など現代的な課題も満載。読む順番が違えば、たしかに感想も変わってくるかもしれない。読まれた方、ぜひお声かけください。

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