今月のいちおし!10月号

「無理ゲー社会」

 

                                      著者 橘 玲

                                      発行 小学館(840円+税)

田中澄代

今、社会で生きること自体が「無理ゲー」になっている。その背景にあるのは、メリトクラシー(能力主義)という考え方であり、その原因はリベラル化にあると論じられている。身分や階級だけでなく、人種・民族・国籍・性別・年齢・性的指向など、本人が選択できない属性による選別は「差別」とみなされる。そうしないために「属性」でないもので選別するとなれば、学歴・資格・経験などで本人の努力しだいとされる。そして自分らしく生きられないのは、本人の努力不足だと片付けられてしまうことがある。つまり、リベラルな社会では、成功も失敗も全て自己責任になるということ。これって遺伝か環境かどちらなのだろう。

著者は、わたしたちは「自由な人生」を求め、いつのまにか「自分らしく生きる」という呪いに囚われてしまったのだと言っている。

そうかもしれないと頷けるところもある。自分らしさという言葉はよく耳にしてきたし、使ってきた。この中の自分らしく生きるということの意味は、さまざまな要因が複雑に絡み合っていて、いままで思っていた自分らしくとは少し違うように思えた

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