センター職員の今月のいちおし(10月)

父さんはどうしてヒトラーに投票したの

文 ディディエ・デニンクス
訳 湯川順也、戦争ホーキの会
絵 PEF
発行 解放出版社 1,800円+税
 



田川朋博

過去の歴史のさまざまな出来事は、後の世の人々によって判断される。それは正しかったのか、間違っていたのか。後だしじゃんけんで、その判断がどうであろうがその人にほとんど影響はない。好きなことが言える。いろんな判断材料もある。

では、その時代に生きた人々はどうやって判断したのだろうか。

1933年3月5日、ドイツで国会選挙が行われ、その夜、ナチ党の党首、アドルフ・ヒトラーは勝利演説をした。その後の歴史はご存知のことと思う。ヒトラーは後の世の人々によって断罪されている。

 物語の中の「ぼく」の父さんは、国会選挙に行く前に、母さんに向かってこう言った。

「よく考えるんだ、リズロット。彼だけがドイツを救える。これが最後のチャンスなんだ。彼はすべての人にもう一度、仕事を与えてくれる。われわれはやっと祖国ドイツを誇りに思えるようになるんだ」

 どこかで聞いた話ではないだろうか。古い時代の、遠い国の話と言えるだろうか。

 母さんは父さんに向かってこう言い返した。

「いいえ、エゴン。私は自分の考えで投票するわ。でも、あなたに同じ選択を押し付けるつもりはないわ!」

 自分が物事を判断するときに、何をもって判断するのか。その判断の軸となるものをしっかりと持っていたいと思う。

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