孤独の果てをさまよう人間に前を向くことで、共に笑い、共に涙を流してくれる仲間を見つけることができることを犬たちが教えてくれた…。 児童養護施設で育つ11歳の宏夢。移動図書館の館長は元刑事のミツさん。毎日やってきておやつを食べ、たわいもない話をしては漫画の本を読んで帰っていくのが宏夢の日課になっていた。 そんなある日、空も見えない狭い物置の中に縛りつけ、つなぎっぱなしの犬に出会う。この犬を「たった一人の家族」として飼っている男性は、家族の絆が切れてしまうことを怖れていたのか、一匹の犬、コロを失うのが怖くて散歩さえもしていなかった。宏夢はこの男性を悪者にしたいわけではなく、コロを幸せにしてやりたい…。そんな気持ちでこの犬の誘拐を計画し実行する。 しかし、コロをはじめ様々な人や事件と遭遇しながら、たとえ孤独の果てを歩こうとも、そこから抜け出すことで本当の居場所を見つけることができることを学んでいく。 人はさまざまの他人からの評価を怖れたり、他人への負担を考えすぎたりすることによって、いくつもの仮面をつけてしまい、本当の自分を見失ってしまうことがある。自分がどう考え、どう行動するかによって、最悪も最高に変えられることを、宏夢の出会いの中で感じることができた。 |