今月のいちおし!!2016年4月

母さんごめん、もう無理だ きょうも傍聴席にいます

著者 朝日新聞社会部
発行 幻冬舎 1,200円+税




衣笠尚貴

 世の中には本当にいろんな事件がおこる。殺人事件、傷害事件、窃盗、ストーカー…。
 事件には加害者と被害者が存在する。そして加害者は法廷の場で裁かれ、判決を言い渡され、刑が確定する。私たちはほとんど毎日何かしらの事件を目にし、耳にしているし、その事件を起こした加害者や被害者に対しても情報を得ることができる(真偽は別として)。さらには、その事件がなぜ起こり得たのか、なぜ加害者は加害者となってしまったのか、そんなことに思いをめぐらす人も少なくないはずだ。この本には、裁判所の傍聴席で日々取材をする記者(裁判担当記者)が、強く心に残った事件の裁判の模様を綴った、朝日新聞デジタル版の連載「きょうも傍聴席にいます」が書籍化されたものだ。その数29編。
 「おかあと結婚する」が口癖だった我が子の命を奪ってしまった母親。連れ添った妻を施設に入れたくないと献身的に介護していたが、ネクタイで首を絞めてしまった夫。発達障害のある次男の子育てに1人苦悩し、命を奪おうとした母親。どの事件も、私たちが生きる社会の中で起こっている。
 私たちは日々おこる事件をどう感じ、どう見ているのだろうか。多くの事件から私たちは何を学び、どんな社会をめざすのか。この本の中に問いに対する答えはない。

 

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