今月のいちおし!!2017年9月

ナビラとマララ 「対テロ戦争」に巻き込まれた二人の少女

著者 宮田 律
発行 講談社 1,200円+税




衣笠尚貴

 マララ・ユースフザイ。彼女の名前は世界の多くの人が知っているだろう。イギリスのBBCが運営するブログに、匿名でありながら「イスラムの女性たちに教育を受ける権利を!」という主張を書き込み、そのことによってイスラム過激派の銃撃を受けて重傷を負った彼女。そして彼女は、生死をさまよいながらも決して屈せず、教育の権利獲得のための奔走し、ノーベル平和賞を史上最年少で受賞した。
 一方、ナビラ・レフマン。マララと同じく、パキスタンの部族地域出身の彼女の名前をどれぐらいの人が知っているだろうか。マララと同じように「教育を受けたい」と切望した彼女は、山でオクラ摘みをしていたところをアメリカ軍の無人機「ドローン」によってミサイルを撃ち込まれ、一緒にいた祖母を亡くし、自らも大きなけがを負った。「対テロ戦争」の犠牲者であることは両者とも同じなのに、ひとりはノーベル賞を受賞、ひとりは無名のまま。いったい彼女たちの違いはなんだったのだろうか。そこに欧米諸国が生んだイスラム世界への偏見や矛盾が見え隠れする。

 

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