タイトルの「宝島」とは「沖縄」のことである。1952年、戦後間もない沖縄・コザ。当時のコザには米軍施設から食料品や衣類、薬品などを盗み出す「戦果アギャー」がいた。そのなかでも英雄視される存在の「オンちゃん」。彼の失踪の謎を中心に、物語は1952年から1972年と展開していく。英雄の弟、親友、恋人。彼の幻影を想いながら、それぞれが人生を歩んでいく。そしてそんな彼らを、歴史が呑み込んでいく。
「米兵による凶悪犯罪」、「コザ暴動」、「沖縄返還運動」。これまで一度は何らかのかたちで触れてきたことのあるはずの問題が、登場人物たちの人間ドラマを通して新たに突きつけられる感覚は、とても一言ではあらわせない。
だれが何を奪ってきたのか、守りたい「宝」とはなにか。もしこの作品を「文字」でなく「心」で表現する方法があれば、そうしたい。そう感じるほど世界観に引き込まれる。