センター職員の今月のいちおし(6月)

動的平衡2 生命は自由になれるか

著者 福岡 伸一
発行 小学館 820円+税



田川 朋博

 

難しそうなタイトルの本ではある。生物学者の福岡伸一さんの本なので、主に生物について書かれた本ではあるが、この考え方はいろいろなことに示唆を与えてくれる。
 この世界において、秩序あるものには等しく、それを破壊しようとする力が情け容赦なく降り注いでいる。これを、「エントロピー(乱雑さ)増大の法則」という。この宇宙で何者もこの法則に反することはできない。頑丈に作られた建造物もいつかは崩れてしまう。きれいに整頓された机もいつの間にか散らばってしまう。
 
では、生物はどうか。生物はこの法則が仕組みを破壊することに先回りして、自らあえて壊すことを選んだ。自分の体の傷んだ部分、古い部分をあえて壊して排出し、食物をとることによって新たに作り直す。破壊と再生の自転車操業によって、エントロピーを捨てて、生物はなんとかバランスを保って生きている。この絶え間なく動きながら平衡状態が保たれていることを動的平衡という。

 動的平衡は他の物事についても言える。例えば、地球環境も動的であることに加えて、多様であることでバランスが保たれている。では、私たち人間は、社会は、今のままでいいのだろうか?ある一瞬を切り取って見るのではなく、動的平衡論的な見方で、世界は絶え間なく動いているという動きの中で見ると、違うものが見えてくるのではないかと感じた。

 

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