センター職員の今月のいちおし(12月)

真夜中の陽だまり「ルポ・夜間保育園」

 

著者 三宅玲子
発行 文芸春秋 1,500円+税




田中 澄代

 福岡市にある夜間保育園「どろんこ保育園」を利用する親子。博多の繁華街中洲近くにある保育園に、自分の人生選択、経済の問題など様々な理由を抱えながら、幼い子どもを預けて働く親たち。ここへ子どもを預ける親の多くが、シングルで生きる親たち。社会的に孤立していたり、パートナーからの暴力など精神的に追い詰められているなどさまざま。辛い日常に追いつめられている親も少なくない。

 その親たちを支え続け、生まれ変わらせる保育士たち。彼女たちの至らない部分には怒ることもあるが、見捨てることなく接し続ける。そして、親としての自覚を促し、理解しようとする姿勢を見せる。直接的に親を助けられなくても、寄り添う存在である保育士たちの「よく頑張ってるね」のメッセージが伝わったとき、親たちは心を開き、つながっていく。

 山縣文治さん(関西大学教授)は自身の調査から、「児童虐待の背景には保護者要因、子ども要因、養育環境要因が複雑に重なり合っており、虐待を防ぐことを目的に仕組みができても、システム化しても、それを活用できない人たちだからこそ、周囲が支えなければならない」と指摘する。

 それぞれの状況に応じたきめ細やかな支援を続けるためには…。こぼれ落ちないような地域づくりとは…。さまざまな課題が見えてくる。

 

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