センター職員今月のいちおし!7月

居るのはつらいよ

ケアとセラピーについての覚書

東畑開人著

医学書院(2,000円+税)

福壽みどり

 「自分の居場所があるって大事だ。」と思う。でも、居場所ってなんだろう。居場所について、とても考えさせられたのは、教育評論家の青木悦さんの話を聴いたとき。どんな内容かは、2012年8月発行の架橋27号を読み返してもらえればうれしい。センターで、貸出可能です。

 「居る」ことは「being」だ。「doingよりbeing」と、最近はよく言われるけれど、「be」は、存在そのものが、安心できるところ。でも、やっぱり「doing」しないとなにごとも動かないことを思うと、「do」にふみきるための安心の「be」が必要なんだと思う。

 もともとは、同じ「居場所」という意味だった「アジール」と「アサイラム」。時を経て、両者は、それぞれ「避難所」的な意味と「収容所」的な意味をもつようになった。「アジール」にしたいと思って始めたことが、いともたやすく経済の論理と相まって管理色の強い「アサイラム」に変わる。でもこの問題は、それをよしとしてしまう社会の問題だけでなく、その価値観は自分の中にもある。無意味なこと、無駄なことって、本当はない。時間泥棒と闘う「モモ」を、もう一度読み返したい気分になった。