悲しみとともにどう生きるか
入江 杏 編著
集英社新書(840円+税)
田中 澄代
あの事件から20年。2000年12月30日に発生した一家が惨殺され、いまだに解決に至らない世田谷一家殺害事件。一部メディアでは平成最大の未解決事件とも取り上げられている。知らない人はいないであろうこの事件だが、被害者遺族は差別・偏見を恐れ6年もの間、沈黙を守っていたのだ。
人は悲しみへの準備はできない。もし自分の世界観が変わるほどのことが起こったら・・・と想像することはできても、現実におこったらたいていの人は自力で乗り越えようとし、孤立していくのだろう。だから心理的、社会的に孤立しないような支援体制が必要。
その一つにグリーフケアがある。この被害者遺族は、グリーフケアに希望の灯を見出した。グリーフケアとのかかわりが、自分の混乱を整理し、亡くなった被害者の生きてきた意味や自分の生きる意味に気づき、人生を捉えなおすきっかけとなっていった。その遺族と6人の著者によるそれぞれの立場から自身の体験も含めたメッセージ集。
悲しみから目をそむけようとする社会は、実は生きることを大切にしていない社会なのではないか。生きる上で悲しみを避けて通ることはできないからだ。悲しみから学ぶグリーフケア。「悲しみ」は「愛しみ」であることとの出逢い。誰かの悲しみに気づいてそっと手を差し伸べる。悲しみを忌避し、封印するのではなく、悲しみを受け止め、悲しみとともにどう生きるか?(まえがきより抜粋)
私たちは、問われている。