あなたのルーツを教えてください
安田菜津紀 著
左右社(1,980円)
衣笠尚貴
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フォトジャーナリストとして国内外を取材する著者の安田菜津紀さんは、コメンテーターとしてテレビ番組にも出演されたり、特定非営利活動法人Dialogue for People(ダイアローグフォーピープル)の副代表理事などを務められている。その著者が「私は長らく自分のルーツについて、表立って語ることがありませんでした」(本著内「なぜ、父は自身の「ルーツ」を隠してきたのか?」より)と言う。
高校2年生のとき、パスポート取得のために戸籍をとると、自身が中学2年生のときに亡くなった父の欄には「韓国籍」とあった。驚き、戸惑い、そして幼いころ家庭のなかで感じていた「違和感」などについて思いを馳せながらも、インターネット上での朝鮮半島に対する誹謗中傷などを目の当たりすると、誰かに話すことなどを躊躇してきたという。
そんな著者が、自身のルーツを紐解き、さらにさまざまなルーツをもつ人びとへのインタビューを行い、異なるルーツを「同じ場」でどう分かち合っていくのかを模索し、コロナ禍で減少した「手触りのある会話」に近い感覚をメディアを通してどのよう作っていくのかを考えるために編んだ一冊。