今月のいちおし!! 12月号

差別はたいてい悪意のない人がする


                              著者:キム・ジヘ

                            訳者:尹怡景

                          大月書店(1,760円税込

                                  田中富治

題名が気になり本を取ってみた。初めに著者の経験談が載せられており、「なるほど、そうだな。」と相槌を打ちながら読み進めた。

 全体で3部・10章で構成されている。内容は主に韓国と米国の事例(人権に関する様々な行動など)を取り上げて、「どのようにして善良な差別主義者が誕生するのか」、「差別はどのように不可視化されるのか」、また、「差別にどう向き合えばいいのか」など、私たちの中にある先入観や偏見と日常のありふれた排除の芽に気付いて、真の公正な社会とはどういうものか、について語られている。

 事例紹介の中で、「街に馴染まない存在」であるマイノリティは、日常的に視線あるいは「監視」のプレッシャーを感じ、慢性的に生活の不安を感じてしまう。すでに特権を持った側の人間にとっては、社会が平等になることが損失として認識される。「立ち位置が変われば、風景も変わる」自分がどこに立って、どんな風景を見ているのか、この風景全体を眺めることが必要である。など、私自身の日常を振りかえり、考えさせられる内容であった。

また、多数者が変わらずに済むことを優先する社会は、少数者の痛みや思いを無視する社会でもあり、この痛みや思いに向き合うことこそ真に必要なことではないかと強く感じた。

日本における差別や人権問題について、これまで以上に深く考えるきっかけになる一冊だと思う。是非、ご一読を!


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