今月のいちおし!2月号

「子ども介護者 ヤングケアラーの現実と社会の壁」


濱島淑惠 著

角川新書(900円+税)

田川 朋博

 最近、テレビや新聞などの報道で「ヤングケアラー」という言葉を見聞きするようになった。国もヤングケアラー支援の方策を示し、鳥取県でも実態調査が行われたり、相談窓口が開設されたりしている。

 本書の著者らが2016年に行った高校生を対象にした調査によると、ヤングケアラーの存在割合は5.2%だった。これは、全国に10万人以上の高校生のヤングケアラーが存在することになるという。もちろん高校生だけの問題ではない。鳥取県が行った調査によると、自分がヤングケアラーに当てはまると回答したのは、小学5年生で1.8%、中学2年生で2.0%だった。私たちの身近にいてもおかしくない存在なのだ。しかし、その実態は見えにくい。本人や周囲も、それが家族内の問題であるために、ケアだと気づきにくいためだ。

本書によると、ヤングケアラーは2つの理不尽に直面しているという。ひとつは家族のケアを担う以外の道がないという理不尽さであり、もう一つはどれほど頑張ってもそのケア経験が評価されないという理不尽さだ。そして、これらは社会によって押し付けられた理不尽さであると指摘している。

ヤングケアラーはどのような困難を抱えているのか。わたしたちの社会が強いている理不尽をどのように取り除けるのか。まずは知ることから始めよう。著者はこう言っている。「言葉を知り、新たな視点を持つことは、私たちの言動を、ひいては社会を変える力がある」。

3月4日(金)開催の第39回ヒューマンライツセミナーでは、本書の著者にお越しいただきます。ぜひご参加ください(要申込)。

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