「同和・人権保育のカリキュラム作成に向けて」
発行 大阪保育子育て人権情報研究センター
500円(税込)
坂根政代
この本は、大阪保育子育て人権情報センターが、2003年から2005年の間、毎月1回行った同和保育研究プロジェクトのまとめです。
部落差別によって奪われてきた権利を取り戻し、差別をなくしていける子どもを育てるための同和保育実践や保育内容が、今日の人権保育の土台を築いたのです。にもかかわらず、「地対財特法」の失効により、「同和保育は終わり、次は人権保育」といった混乱がはじまっています。このような状況の中、今一度、同和保育とはなにか?差別をなくす主体を育てるとはどういうことかを明確にし、どのような実践が求められているのかを考えていくことを、この研究のねらいにしました。
各園での実践を交流することから始まったこの研究プロジェクトでは、子どもの現実から出発しているのだろうか、また現実の姿をどう捉えているのかということが常に問われました。それなしに、反差別・人権を具体的に行動できる子どもの姿を描くことができないからです。前半の1年半は、子どもの姿を捉えるために、「観察」という手法を学習し、観察した各園の取り組みを出し合い具体的に議論しました。そして、後半は、反差別・人権の具体的な子どもの姿と保育のねらいを整理し、年齢別の人権行動試案(子ども自身が生活のなかで人権の問題に気づき、取り組み、解決していく活動)と保育計画の立案にむけた視点と手順をまとめました。子どもの現実から学びつくりだす保育実践のスタート地点にやっと立ったこの3年、ぜひ、保育所・幼稚園等で子どもの人権を軸にした保育計画、カリキュラムを作るときの議論に活用して欲しいと、本書は呼びかけています。この本の内容は、この間、鳥取で話し合ってきたことと重なっています。自分たちの学びを振り返る意味でも、どんな子どもを育てたいのかということをもう一度考える意味でも、ぜひ、就学前教育現場の方々に読んでいただきたいと思いました。