今月のいちおし‼2月

映画『トランスアメリカ』





小宮山聖美

 生まれながらに自らの“性”に違和感を持つ、トランスセクシャル(性同一性障害)の主人公、ブリーは、心の性と同じ、女性の身体を手に入れるために、最後の手術を控えていた。
 そんなある日、トビーと名乗る少年を引き取るようにと警察から連絡が入る。トビーかつてブリーが”男性”だった頃にできた息子だった。トビーが幼い頃に母は自殺し、継父に虐待を受けながら暮らしていたがついに家出し、都会で暮らしていたが麻薬所持で捕まった。存在しか知らない父親に思慕の念を抱くトビーは、後見人として父親の名前を伝えたのだった。
 戸惑いながらも息子に会ったブリーは、自分が”父親”であることが言えないまま、協会の使いと偽って彼の後見人となる。
 最初トビーは、突然現れた口うるさい”女性”に反発し、打ち解けられないでいた。けれども、二人で旅を続けていくうちに、衝突し、戸惑いながらも、いつしか”女性”としてのブリーを愛するようになっていく。ブリーもまたトビーを少しずつわが子として愛するようになっていくのだが、”父親”を慕うトビーに自分の立場を明かせずにいた。
 そして、ついに愛を打ち明けたトビーに、”父親”であることを打ち明けたブリー…。傷つき、ブリーから離れていったトビー。手術を受け“女性”となったブリーは、自分にとってトビーがどれ程かけがえのない存在であったのかをようやく知る…。
 この映画を通して、愛って性別じゃないなぁ、って実感した。”母””父””女””男”という社会的立場を越え、互いの存在を一人の人間として大切だと思う、その気持ちが愛なのだろうと思った。
 親子であれ家族であれ、互いを大切だと思う気持ちに性別は関係ない。親子も家族も多様な形がある。当たり前のことだけど、私はどうだったのかな。振り返らされた思いだった。

 

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