アルネは、父親の心中自殺で家族を失い、主人公の家へやって来る。他所者であり、そして他の人には無い才能を見せ始めるアルネに、主人公の兄弟も含めた彼の周りの子ども達は、無視やからかいでアルネと接するようになる。それに対して、主人公はそばで見守りながらアルネをかばい、アルネも必死で彼らに溶け込もうとするが、その過程で不幸な事件が起こり、アルネは自ら命を絶ってしまう。 いじめの問題が取り上げられているが、物語の本題はそちらではなく、むしろ一人の純心無垢な少年がなぜ自ら命を絶つまでになったか、にある。そして、その謎について作者からは結局、語られることは無い。 アルネはなぜ、自ら命を絶ってしまったのか、本当の理由は彼にしかわからない。読者は推測することしか出来ないのだが、ただ一つわかるのは、人の心は壊れ易いということだ。それゆえ、小さな悪意も人によっては大きなものになる。彼は、その純粋さゆえに人より傷つきやすく、そして自ら命を絶ってしまったように思った。 ただ、本文自体は主人公がアルネのことを回想しながら進む形で、アルネへだけでなく、兄妹も含めた他の家族への愛情が感じられてとても読み易かった。物語はどんどん悲劇へ向かっていくのだが、回想は深刻にならず、主人公のすべてを包んでしまうような優しさで、救われた気がした。 |