今月のいちおし!9月

         映画「スタンドアップ」

                 椋田昇一

離婚した女性が生活のために働こうとしている、それだけなのに…。繰り返される性的嫌がらせ、誹謗、中傷。アメリカで初のセクハラ集団訴訟で勝訴した実話に基づいて制作され、この問題で闘った女性たちの勇気に捧げられた映画。

差別や暴力は、生活や体を壊すだけでなく、人と人との関係を引き裂き、心をも崩されてしまう。鉱山で働く主人公・ジョージーは「あの時、あんな男に乱暴(レイプ)されて、私は違うものに変わってしまった」と振り返る。そして、「人には、生きがいが必要なの。子どものためなら何でもする」と語る。つい先日長島愛生園で聞いた、「毎朝、目が覚めて、この一日をどう過ごすのかと思う。その日その日の目標がないのは…。何かやりたいと思う。それが人間、そして生きるということ」という話と重なった。

社長が「私がなぜ君を雇ったと思う?腕利きの弁護士だからか?いいや、腕利きの女性弁護士だからだ」、「それだぁ、男はそんなことは言わん。女はすぐにムキになる」と会社側の弁護士に言う。法廷ではその弁護士が「何でも大げさに騒ぎすぎ。あらぬ曲解をして妄想を膨らませる。ヒステリックだ」と原告側に迫る。鉱山でともに働く女性たちは、ジョージーに向かって「騒いでも逆効果よ。いい迷惑なんだからね。ちゃんと責任とってね。巻き込まないで」と言う。そして、“迫害はなかった”と供述する。

 ジョージーの弁護士は、立ち上がる彼女と出会い、それまでの自らの生き方をリセットするかのように弁護を引き受けた。そして、「力のある者が弱い者を傷つけていたら?まずは、立ち上がるべきだ。そして真実を言うべきだ。友のために立ち上がれ。立ち上がれ。たとえ一人きりでも立ち上がれ!」と法廷で語る。

 もうジョージーは独りではない。母が、父が、息子が、そして仲間たちが一人ずつ…。

 学生時代からの大切な友人に紹介されてから3ヶ月、ようやくたどりついた。


 

 

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