私が私のまんまでいたい。私が私のまんまでいられなくするものの正体を知りたい。なくしたい。そう思い始めてから今日まで、そしてこの先も差別撤廃を願い、つたない歩みを続けていくだろう。 振り返ってみれば今の私があるのはまさに、さまざまな形で出会ってきたたくさんの人たちのおかげだと、改めてそう思う。 著者である松村さんとの初めての出会いは、差別撤廃のつたない歩を踏む出したよちよち歩きの頃、地元の解放講座でのことだった。小柄な松村さんが自らをさらけ出し、全身で語る姿に圧倒された。気づけば話に引き込まれ、大いに笑い、大いに泣いた。差別の不当性を笑いで吹き飛ばし、展望をもってずんずん進む松村さんに、自らが差別の罠から解き放たれることの素晴らしさを教えられた。 さて、著書「だまってられへん」は、月刊『解放教育』に2005年4月から2007年3月まで連載されたコラムである。そんな松村さんを創った様々な人たちとの出会いが実に生き生きと描かれている。ひとつひとつの出会いに、時には胸を熱くし、時には怒りに震え、響き合い、こすれ合い、心を揺り動かして生きているんだと伝えてくれる。今を生きているだけで十分すごいことなんだと。著書を通し私の中にたくさんの顔が浮かび上がった。いつの日も私は本当にたくさんの豊かな出会いをもらっていたんだと実感し、胸が熱くなった。 「人間は、人と人の間にいてこそ、人間である。人との交わりをし、人の間に入っていって、人は人間になっていく。」と松村さんはいう。今までも、そしてこれからも出会うであろうたくさんの人の中で、心を揺り動かしながら歩み続けていきたいと思う。“つたない歩みでもええやん。あんた一人やないで”にっこり笑ってそっと背中を押してくれる、そんな一冊である。 |