人権研修とよばない人権の学びに心地良い時が流れている。「知識と技術が必要で人間性が大事。それが相手との信頼関係をつくる」と語る講師陣。腑に落ちるのは、地で行く人の説得力なのだろう。
1,300頁におよぶテキストと講師の話にたびたび登場するのが「福祉や介護に就いている人は、正義感の強い人が多い。そして、介護する側の“善意”と“正義感”だけで進められることがよくある」「 “私がこんなにいいことをしているのだから”という自己満足や善意の押し付けは、相手の尊厳と人格を尊重しないこと。その人の人権を守るということは、その人自身にとってどうなのかを考えること。」というお話。
それって人権に取り組んでいる人も同じ?!と聞き入っていると、「共感的な態度とは、相手を基準にして相手の感情を理解しようとすること。同情は、相手に対して自分を基準にして感情を示すこと」と続く。テキストには、「(事例の紹介に続けて)大変思いやりのあるやさしさも、ちょっとの不手際から差別になってしまうということです。その人の身になって手を差しのべるといいますが、自分が想定する思いだけで、その人の身になることは危険です。人生観、生活観、生活信条など、それぞれの個別性によって当然求めることに違いがあるのです」と綴ったホームヘルパーのお便りが載っている。「地獄への道は善意で敷き詰められている」とは『おとなの学び』で出会った言葉。
「一人ひとりを大切にする」とか「人はみな違う」とよくいう。「お風呂であなたは身体のどこから洗い始めますか?」こんなグループワークがあった。生活の場面は十人十色。私にとってはゴミとしか思えない物が、その人にとっては大切な想い出の品であったり、貴重なメモ用紙であったりする。排泄、それは「人の尊厳」を最も問う場面のひとつだと、確かにと実感する。
「この仕事は、人間的な仕事として魅力が数多くあります。さまざまな人との出会いは無関係な関係を、とても大切な関係につくり上げる不思議さがあります。また、人それぞれの固有の人生に触れる心ひかれるおもしろさがあります。そして、その人の人生の重み、深さは尊敬に値し、生きることの偉大さ、命の尊さを再考させられます」、テキスト別頁にはこう記されている。ある講師は、「どんな病よりも孤独が人の命を縮める」というマザー・テレサの言葉を紹介したあとに、「人は人と接しなかったら自分を失う」といわれた。
受容とは、受容と是認の相違、自己覚知ということ、寄り添うとは…。人権の学びにもあるこれらのキーワードがここでも随所に。
12月人権週間のころには上野千鶴子さんの『おひとりさまの老後』のお話も聞ける。ワクワクする学びはこれからもつづく。