今月のいちおし!!2009年2月

愛知における部落差別の現状





坂根 政代

 

200726日に「B地区にようこそin愛知県」の差別ホームページ事件が発覚した。このホームページは、200610月に作成されている。しかし、このホームページがあることを連絡したのは、たった1人である。なぜ?という思いとともに、部落解放同盟愛知県連が作成したこの事件に対する取り組みの報告書『愛知における部落差別の現状』を見て、あらためて差別が蔓延していくことの恐怖を感じた。

 このホームページでは、被差別部落の住宅や公園などをカメラにとり、「最恐」「危険」などの文言を書き連ね、部落があたかも「恐ろしく危険なもの」という差別意識を増幅させている。また、「部落マップ」という項をクリックすると「愛知県部落マップ」がでてくる。その地名をさらにクリックするとその部落の概要や地図がでてくる。それを使うと容易に被差別部落に行くことができるようになっている。まさに「写真・動画・地図つき部落地名総鑑」である。

 インターネットという「顔も見えない」「匿名性が高い」社会は、なんでも言いたい放題、差別を野放しにしてしまう危険性をはらんでいる。このようなホームページを見過ごすことは、同種のものが次から次とつくられる可能性を放置することになる。現に、愛知県連が愛知県とともに法務局に要請し、20072月ホームページ管理者がこのホームページを削除したが、この事件発覚後、「○○ホームページ・オフ会」(パソコンの電源を切って集まる会)と題し、部落を探索する会までできているという恐ろしい現状が出てきている。一度でてしまった情報は完全に消すことができないのだ。

この事件で問われたのは何か。表現の自由という権利は大事だが、差別する自由はないという問題。そして、そのことに関連して「匿名」で人権を侵害することの問題について真剣に考えること。また、何が差別・人権侵害にあたり、被害にあった場合の救済について法律面での整備が求められていること。そして、人権の視点で情報を活用する教育の推進である。

あらためて、この本から、差別を受けている当事者に思いをはせ、その人たちが安心して自分の故郷に住むことを奪ってはならないと思った。そして、誰もが安心して生きることができる社会を築いていきたいとも。

今月発行の『架橋』20号に、田畑重志さん執筆の「インターネットの中の差別問題と対処法」が掲載されています。ぜひ、ご一読ください。

 

 

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