今月のいちおし!!2009年12月

ツレがうつになりまして

著者 細川貂々
発行 幻冬社 (1,100円+税)




山中絵美

 今時、「うつ病」を「怠け病」なんて言う人はさすがにいないんじゃないか…そう思えるくらい、この病名をいろんなところで耳にするようになった。私がこの病名を知ったのはいつだっただろうかと思い出そうとしても思い出せないくらい、ずいぶんと昔のことだったように思う。もともと、なぜか病名やその症例などについて興味があり、小さい頃からそういう本をめくって眺めていた。きっとこの病気も、その時に名前程度に知ったのではないかと思う。なんでも、うつ病は生涯のうちに15から7人に1人の割合で発症する可能性が考えられると聞いたので、結構な身近な病気である。
 本書に出てくる“ツレ”もその病気にかかった1人だ。前向きで明るく、仕事もバリバリこなしていた“ツレ”だったが、不景気で社員がリストラされ、会社に残った“ツレ”は1人で多くの仕事を抱えなければならなくなってしまう。慣れない仕事を任され、眠れない日々が続く。そんなある朝、“ツレ”が真顔でこう言ったのだ。『死にたい』と。
 病気について書かれた本と聞くと、ついつい重くて深刻な内容を想像しがちだが、本書は違う。笑いも交えつつ、“ツレ”と彼を支える“てんさん”夫婦の様子を可愛らしい絵と、簡単な文章で書く。症状は深刻なのだが、読んでいて、何だか2人の仲が微笑ましいな…とさえ思ってしまった。
 どんな病気も1人では治せない。家族の支えがあったり、医者にかかったり、そして処方された薬のお世話になったりで…だけど、一番の特効薬は、自分のことを理解してくれる人の存在なのではないかと、この本を読んで、ふと思った。

 

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