今月のいちおし!!2010年1月

生きなおすのにもってこいの日

著者 田口ランディ
発行 バジリコ株式会社 (1,300円+税)




福壽 みどり

 

「実際のところ、人権ってなんだろう?!」。大雪を予感させる大量のカメムシを片っ端からガムテープで捕獲しながら、本気で悩んだ2009年秋。「私には、カメムシを捕獲する権利が果たしてあるのか、どうか」。由々しき問題である。食卓にのぼり、「いただきます」とせめてそのいのちに感謝されることもない。『害虫』というけれど、それはだれにとっての害なのか。もう、そんなことを考えだすと、なんだかツラくなってくる。でも、カメムシがいると困るというか、イヤなのもたしかである。「私って、ワガママね」と思いつつ、でも、やっぱりなんだかすっきりしない今日この頃。これじゃー、自然との共生や環境問題も、どこから語ればいいのかわからない。

 そんなとき、この本が教えてくれたこと。「世の中には、本当はいろんな見方があるのに、今の自分のものの考え方にとらわれ、それを絶対的なものにしていないか」ということ。まだ見えなくてもいい、ただ知っているだけでもいい。でも、必ず知っていてほしい。一面しか見ていない、見えていないものに、反対側から見たり、上から見たり、下から見たり、いろんな見方があり、いろんな表情があることを。私は、私を生きながら、絶えず私以外の人が見る私も気にしているし、「あなたって、こんな人ね」と決めつけられるのは好きではない。

そんなことを思いながら回覧されてきた冊子を見ていたら、『世界は人間なしに始まったし、人間なしにおわるだろう』という一節に目が留まった。「ものごとを多面的に見たい」と心に留めている、それだけだけど、それだけでちょっとしたことに、視点や心がひっかかる。大事なことだと思った。

「生きなおす」までいかなくても、日々目に見えない進化を遂げている私である。

 

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