今見ているこの壁の色は、私には緑色に見えるけど、実は緑色じゃないかもしれない…。少し前に知人とこんな話をした。確か、人間の見分けることができる色の数の話をしていた時だ。
「色弱」の人がいることは、私が学生だった頃に知った。学校の授業で目のつくりについて習うからだ。しかし、知識として知ってはいたが、実際どんな風に見えるのかまでは知らなかった。
本書には、画像変換ソフトで色弱の人の見え方を疑似的に再現した写真が載っている。見やすいと思っていた標識の色が、背景と似たような色になってしまって見えにくかったり、何とも思わずに見ていた電光掲示板の表示が、点いているのか消えているのか分かりづらかったり…これを見るまでは、逆にそれらは私にとって、見やすくて、便利なものだとさえ思っていた。
そうやって意識して周りを見てみれば、リモコンの色分けしてあるボタンに色の名前が書かれていたり、売ってある洋服のタグに色の表示があったり…少し前には、あるゲーム機の電池残量を示すランプの色が、色弱の人でも見やすい色に改良されたという記事を読んだこともある。私が気付かなかっただけで、誰もが分かりやすい、使いやすいよう、デザインされているものがあるのだ。
今、「色覚異常」は「少数派色覚」と呼ばれたり、「色覚特性」という呼び方も使われ始めたりしているそうだ。そもそも正常な色覚といわれている人も、そういう見え方をする人が多数派だというだけのこと。おそらく、その多数派になるだろう私は、大多数の人と共通する感覚という理由だけで、見えている世界について、なんにも疑問を抱かなかった自分に気付かされた。
この本書の最後には、色弱の人でも見やすい色使いなどの提案がされている。デザイン関係者だけでなく、一般の企業でも、資料作成などで役立つ一冊になっている。