今月のいちおし!10月

「差別は思いやりでは解決しない」 ジェンダーやLGBTQから考える


著者 神谷悠一
発行 集英社 902円




田中富治

 この本では、人権問題の中で、特に「ジェンダー」や「LGBTQ」の問題について、考えたり語ったりする際に、「思いやり」が万能の力を持つかのように思われていて、実際には何も進んでいないにもかかわらず、何かを「やった感」「やっている感」だけが残る、という状況について、著者が大学の授業や企業研修、自治体の講座などの経験から、事例を通じて疑問点を伝え、解決策を模索していく内容となっている。

 「思いやり」の限界や落とし穴、現時点での様々な制度の到達点や実効性の弱さの課題などを紹介しながら、「思いやり」が空回りしている実態や「思いやり」だけでは解決が難しいことの説明がなされており、もう一段階進めて「思いやり」が形をもって行き渡るような社会(法制度の導入が必要でありそれが一番の近道である)とするための取り組みの必要性が語られている。

 制度が整備されることで取り組みが進み、その積み重ねがあり今がある。自分のこれまでの歩みを振り返り、もう一段階進めるこれからの取り組みについて改めて考えてみることが必要だと感じた。人権問題に関わってくださる多くの皆さんとともに、誰もが安心して暮すことができる社会となるよう、歩みを進めて行きたいと思った。

 皆さんも是非、ご一読を。

 

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