今月のいちおし!!2010年7月

終末のフール

著者 伊坂幸太郎
発行 集英社 税込660円




田川朋博

 

「あなたの余命は○年です」。そんな極限状態に陥った時、自分は何を思い、残された命をどうやって生きていくのだろう。

 「8年後に小惑星が落ちてきて地球が滅亡する」。そう発表されてから5年がたったところから物語は始まる。つまり、全人類が「余命3年」の状態である。世界は大混乱から抜け出し、危うい均衡の中で一時の平穏を取り戻していた。そんな中でそれぞれの人が、それぞれの残された命を精いっぱいに生きる決意をする。

 あと3年の生きる意味。「どうせ死ぬんだから」と自棄になったり、絶望して自ら命を絶ったり。3年も、30年も、300年も、「生きる」ということには違いはないはず。私が生きている世界も実は明日どうなるかわからない。明日死んでしまうかもわからない。だから、「じたばたして、あがいて、もがいて」、そんなふうに生きていきたい。 

 

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