今月のいちおし!!2010年11月

父親再生

著者 信田 さよ子
発行 NTT出版 1,600円+税




田中 澄代

少し前、学生の頃の話になった。ちょうどこの本を読んでいたこともあってか、「あの頃“父の不在”をどれほど喜んでいただろう」そんなことが頭をよぎった。

当時、父に対して、恐いとか、うるさいとかではなく、ただ鬱陶しく存在そのものが嫌でしょうがなかった。しかし、母に対してそう思ったことは一度もなかったのに、父に対してそう感じさせたものは何だったのか?

世間一般の父親たちは、家庭の中で誉められ、賞賛されることを、口には出さずとも望んでいる。しかし、父の存在を不在=「負の存在」にしてしまうと、夜の街に繰りだし、酔いというヴェールに覆われた「ほめ言葉」をお金で買うことさえしてしまうのだ。

正しい父親像があるわけではない。よい父かどうかは、妻や子どもの評価によって決められる。また、よい妻や子どもになるためには、父から誉められ、良い評価をされることでもある。それは相互関係なのだろう。

自分と父との関係を考えることは、両親の関係を振り返ることにもなる。私は、父の存在を認めていたのだろうか?父親との関係を振り返ってみた時、過去のことは忘れてはいけないと思った。自分自身も歳を重ね、今だから肯定的に捉えられるのかもしれないが、過去を振り返ることから様々なことが見えてきた。我が子が成長していくとともに、鬱陶しいと感じていた父も老いてきた今、親子関係を大切にしていけたらいいなと思う。

 

 

 

機関紙「ライツ」見出しへ戻る