「限界集落」ということばが何を物語っているか気になった。ことばの意味は、過疎化などで住民の過半数以上が65歳以上の高齢者になり、生活道路の管理や地域の行事、冠婚葬祭など、住民が協力しながら行っていた共同体としての機能維持が困難になった集落を指すそうだ。ちなみに「過疎」ということばがあらわれたのは1966年のことだそうである。時代は高度経済成長の道をひた走り、地方から若者がつぎつぎに都会の労働者となって流出していき、人口が減ってゆく状態をあらわしていた。
本書は限界集落の暮らしを追いながら、そこで暮らす高齢者たちが、子や孫の幸せを望み、不安を抱えながら支え合って生きる様子を描いている。また新たなことに挑戦するために移住することを選んだ若い家族の姿も描き、高齢者ばかりの集落に子どもの声が響き、限界集落に希望の灯をともすエピソードも綴られている。
社会を支える最小単位の集落が消滅する危険がある限界集落。読み始めたときは、その運命に従うほかに方法はないのかと切なさや寂しさだけを感じた。それは、生まれ育ったふるさとと重なったからでもある。しかし読み終えたとき、必死になって今を生きるひとびとの姿に勇気をもらい、わずかなのかも知れないが明るく見える動きが、立ち止まってばかりはいられない、前に進むために挑戦することの大切さを私に教えてくれた作品です。