今月のいちおし!! 2011年5月

漂流少女-夜の街に居場所を求めて-

著者 橘 ジュン
発行 太郎次郎社エディタス(1,500円+税)




田中澄代

 

私は“救う人”でも“止める人”でもない他人だけど、「目の前にいるあなたのことを知りたい、わかりたい」と思っている大人がいるってことを、彼女たちに伝えたい。孤独に陥ったり、周囲の期待に押しつぶされそうになったり、自分というものを見失ったりしている若者たちが、なくした自分を取り戻せる場所。価値観や考え方、さまざまな物語をもつ人と人が出会い、その人を知ることで喜びや悲しみや痛みを共有できる、そんな場所をつくりたいと活動を続ける著者。

街にたむろする若者たち。頼れる保護者がいなかったり、幼いころから虐待をうけるなど理由はさまざま。居場所や行き場所をなくし、安全とはいえない環境の中必死で生き抜いている彼女たちの寂しさや孤独という心の隙間を狙って入り込む大人たち。そんな社会や大人に不信感をもった若者たちは、周囲に心を開けず、人に助けを求めることもできない。仮面をかぶり屈託のない笑顔を見せているが、実はその裏で安心を求めて、居場所を求めて、温もりを求めてもがき続けているのだろう。

ほんとうに苦しいとき、悲しいとき、つらいときって・・・、人には話せなくて、でも話したくて聞いてほしくて自分の存在をわかってもらいたい。そして認めてもらいたい。相手を知れば知るほど、自分のことも見えてくる。相手に変わること、成長することを求める前に「そのままのキミでいいよ」と言えるよう、いつも同じ目線で、変わらない気持ちで向きあっていける自分をつくっていけたらなと思う。

 

機関紙「ライツ」見出しへ戻る