今月のいちおし!! 2011年8月

 

STAND 立ち上がる選択

著者 大藪順子
発行 いのちのことば社
   フォレストブックス(1,500+円)




田中美貴枝

 アメリカで新聞社専属のフォトグラファーとして働いていた日本人カメラマンがその日(性暴力被害にあった日)を境にして人生を変えられ、自分自身の力、聖書の言葉(信仰)、周りの人に支えられ立ち上がるまでを記した作品です。
 「あなたは悪くない」「あなたに責任はない」「暴力は全面的に加害者に責任がある」「安全に暮らす権利がある」との理解ある言葉をかけられても、加害者ではなく、被害者が自分を責め、苦しむ現実がある。
 新しい生活へのスタートという言葉(新しい生活 なぜ もとの生活ではないのか。変わることを求められるのは被害者か 加害者ではないのか)に違和感を覚え、怒り、理不尽さを感じながらも困難に立ち向かい、妥協しないで前へ進んできた著者。自分のため、すべての被害者のため、新たな被害者を生まないために。そして、「性暴力サバイバー達の素顔」プロジェクトを立ち上げた。
 性暴力の問題は女性だけの問題ではありません。被害者は多数が女性ですので女性の問題と思われがちですが、加害者は男性です。男性の問題でもあるのです。性的虐待、人身売買、児童買春、児童ポルノ、声を上げられない被害者はたくさんいます。性暴力は犯罪であり、重大な人権侵害です。
 大藪さんは、他人の人権を尊重することが一番の防止策と書いていらっしゃいます。すべての事柄に共通することではないでしょうか。
 聖書からの言葉が各章の見出しとして付してあります。
 「終わりは始まり」「死んだ一粒の麦」「すべての事には時がある」「立ち上がる選択」。一つひとつが意味深い言葉です。ぜひ読んでみてください。

 

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