今月のいちおし!12月

スマホ脳

著 アンデシュ・ハンセン

訳 久山葉子

発行 新潮新書 980円+税




田川朋博

「乳児、つまり月齢12カ月までの4人に1人がインターネットを使っている」、「2歳児は半数以上がインターネットを毎日使っている」、「7歳児のほとんどがインターネットを毎日利用し、11歳は実質全員(98%)が自分のスマホを持っている」、「ティーンエイジャーは1日に34時間をスマホに費やしている」。これは、2017年に実施された「スウェーデン人とインターネット」という調査の結果だ。著者によれば、これはスウェーデンに限った現象ではないという。

 その影響は?若者がどんどん眠れなくなったり、精神不調が急増しているらしい。実際、精神科を受診する若者が急増したのは2010年から2016年。この時期に若者の生活に起きた最大の変化として、スマホからインターネットにアクセスできるようになったことがあるという。

 スマホを持つようになったのは仕事をするようになってから、という我が身にとって思い当たるのは、手持ち無沙汰の時に何となくスマホを見てしまう、出かける時にスマホを忘れると何となく落ち着かない気持ちになってしまう、数年前まではそんなことはなかったのに。デジタルに乗り遅れ気味の、普段SNSを全くやらない身にもそんなことを思わせるのがスマホなのだろう。

 メタバースやDX、Society5.0…、デジタルへの移行はどんどん進んでいく。それに伴って、個人がデジタルメディアに費やす時間は今後もますます増えていくだろう。今の子どもたち、そしてこれから生まれている子どもたちにはどんな影響が出てくるんだろう。本書でアップル社創業者のスティーブ・ジョブスのこんな言葉が紹介されている。

「うちでは、子供たちがデジタル機器を使う時間を制限している」

答えの一端がここにあるのではないかと思う。

 

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