普段は写真集なんてめったに見ない。だから、「17人の視点」と言われても、知っている写真家は篠山紀信だけだった。
ページをめくると、当然文章はない。あるのは、写真とそれを撮った写真家の名前だけ。しかし、それぞれの写真から、さまざまな物語やメッセージが伝わってきて、静かに想像を掻き立てられる。
窓が外れた家の壁にはペンキで書かれた「コワシテクダサイ」の文字。
避難所の中だろうか、荷物に囲まれた中でコンビニ弁当を食べる子どもとおばあさん。たんすの上には位牌が据えられている。
津波の影響だろうか、自転車や木の破片でばらばらになった家の中、欄間の上には、そこに住んでいた人たちの先祖の位牌であろう写真がいまも飾られたままになっている。
人影のないまちの中で座り込む豚。道路の真ん中でたたずむダチョウ。そして、車の前を悠然と闊歩する牛たち。
あれから1年。これらの写真がいつごろ撮られたものかはわからないが、今も震災は続いている。撮られている写真には、さまざまな事情が見え隠れしている。最後の方のページにある家族、夫婦、親子の笑顔の写真を見ると、今そこで生きている人たちがいるんだということを強く感じた。