何気に立ち寄った書店で1冊の本が目にとまった。本の表紙には、お風呂に入っているのだろうか、お母さんと子どもが映っていた。闘病記はこれまで読むことはなかったが、読んでいくうちにいろいろなことを思い出す自分がいた。
著者は33歳のとき、血液のガン、悪性リンパ腫を告知される。仕事と治療との両立の葛藤、子育て、夫との離婚など、さまざまな問題も同時に降りかかったが、ユーモアを忘れず、常に前向きに生きた。その証が、38歳で亡くなる直前までつづった日記と、ひとり娘のこなつちゃんとの間で交わした交換ノートの内容としてまとめられている。
「娘には注意されるけど、できればいつも無理してでも、ふざけながら笑ってやりすごしたいんだ。(中略)笑うことは、なりよりも力になるんやで。大事なことや。忘れるな」
「なんとしても生き抜こう。この娘の成長を見逃すものか。この愛しい娘に、寂しい思いなどさせるわけにはいかない、絶対に。生きて生きて生き抜いてやる」
「こなつの『こ』は心優しく、『な』は流されず、『つ』は強く。そのように生きてほしい…」
最後まで諦めずに強く生き抜いたひとりの女性が残したメッセージからは、生きていくのに役立つヒントや心にしみる言葉がたくさんあった。2度の骨髄移植でボロボロになりながらも、「神様、私に素晴らしい人生をありがとう」と感謝して逝った彼女の強さ、優しさはどこから生まれるのか。うまく言えないが、その答えがちりばめられているようで、生きる勇気と元気をもらえる1冊だと思う。