著者の三木さんは、「会話というのは、実は一枚岩の営みではなく、そのなかにいくつもの異なる営みが含まれている集合体なのではないか」と分析し、そして少なくともそのいくつもの営みのなかにはコミュニケーション(「発言を通じて話し手と聞き手のあいだで約束事をしていくような営み」)とマニュピレーション(「発言を通じて話し手が聞き手の心理や行動を操ろうとする営み」)があると言う。
「ONE PIECE」や「鋼の錬金術師」などの作品中の会話を取り上げながら、その観点に基づいて会話の複雑さと面白さを描き出すことを試みていて、それが知っている場面だとなおさら興味深い分析がされていることに気付く。
約束事を交わすコミュニケーションであっても、そこに当事者間または社会的な力関係が存在すると不利益を被る人が出ることは、現実にもたくさんある。自分はあのとき「なぜそう言ったのか(言わなかったのか)」、あのとき言われたあの言葉はマニュピレーションではなかったか。
会話、そしてその会話の中の一つひとつの言葉の持つ力について考えてみるのはどうだろうか。
※著者の三木那由他さんをお招きし、講演会を開催します。ぜひご参加ください。
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