今月のいちおし!!2015年5月

「助けて」といえる国へ―人と社会をつなぐ

著者 奥田知志・茂木健一郎
発行 集英社新書 760円+税




田中美貴枝

 長きにわたり困窮者支援をしている、牧師奥田知志さんと、脳科学者茂木健一郎さんの対談です。
 「なぜ困窮者支援をするのか」と聞かれたとき、「それが人間だからだ」「それが社会だからだ」と奥田さんは答えるそうです。質問者の心のなかに、困窮者は自業自得であり、助ける必要などないという現代社会の掟が見え隠れするそうです。
 なぜ、そう答えるのか。それは、人は独りでは生きていけないから。
 自分が安心安全に生きるための絆、でもそれが手段になっていないか。
 「安心安全を望むとそれは無縁社会」「私たちは他者を通して自分を知る」「自分を認識することは自己と他者を見て学習するもの」「闇に住み闇を見つめていなければ光を見出すことはできない」など、いろいろな逆説的な事実のなかに本質が見え隠れする。今の社会に通ずる納得の言葉の数々でした。どちらが表か裏か判らないけれど、表があれば裏がある。そしてどちらにも真実がある。奥田さんいわく、困窮者支援とは、強い人が弱い人を助けるということではなく、弱い人間同士が共に生きること。
 「人権とっとり講座」の講師として、9月に奥田さんに来ていただきます。1回のみの受講も歓迎ですので是非ご参加ください。
  日時:9月17日(木)13:30~ /場所:鳥取市人権交流プラザ
  内容:絆の回復~人は独りでは生きていけない~

 

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