今月のいちおし!!2015年6月

それでもボクは会議室で闘う ドキュメント刑事司法改革

著者 周防正行
発行 岩波書店 1,700円+税




衣笠尚貴

 「疑わしきは被告人の利益に」「10人の真犯人を逃すとも一人の無辜を罰するなかれ」。映画「それでもボクはやってない」で日本の刑事裁判の不条理を描いた著者、映画監督周防正行さん。ある日ふとしたことから、思わぬ縁で「新時代の刑事司法制度特別部会」の有識者委員に選ばれることに。いわゆる「郵政不正事件」で被告人とされた厚生労働省の村木厚子さんも著者と同様、委員の一人として名を連ねていた。が、総勢42名という大所帯の特別部会の顔ぶれは、著者と親交のあった法曹関係者に言わせれば“絶望的なメンバー”であった。
 「取調べの可視化」「証拠の全面開示」「人質司法からの脱却」。これら3項目が柱になると考えていた著者であったが、3年以上にわたる議論の結果出された答申の中身は、捜査機関の活動を監視しその権限を抑制する方向とは逆の方向へ。
 果たして私たちは、刑事司法の現場にどんな実態があるのかよく知っているのだろうか。取調べの全面可視化をはじめとする刑事司法改革の道は、確かに険しいが、この本で私たちの知らない実態が“可視化”されたことは非常の大きな意味があるだろう。

 

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