今月のいちおし!!2015年12月

誰も戦争を教えられない

著者 古市憲寿
発行 講談社+α文庫 850円+税




田川朋博

 「戦争」と聞いて、まず何を思い浮かべるだろうか。ほとんどの人が第二次世界大戦を思い浮かべるのではないだろうか。「戦後○○年」といえば、日本では1945年から何年目ということだし、今年は新聞やテレビなどで“戦後70年”をたくさん見ることになった。しかし、世界的にみると、あれからいくつも戦争はあったし、つい最近もフランスの大統領から「我々は戦争状態にある」という発言があった。
 「誰も戦争を教えてくれなかった。だから僕は、旅を始めた…」。本書では、著者が世界中に存在するいろいろな戦争博物館と平和博物館を見て回っている。広島、沖縄、東京、アウシュビッツ、南京、パールハーバー…。戦争の伝え方はそれぞれだし、戦争の捉え方もさまざまだった。“あの戦争”についても、戦争博物館や平和博物館を見ると、70年が経過したにもかかわらず大きな記憶としてどうとらえるのかというのは日本のなかでもさまざまで、70年が経過したことで小さな記憶としての個人の記憶を聞けることも少なくなってきた。
 無人戦闘機やサイバー戦争など、戦争の形も大きく変わってきた。70年が経過して“あの戦争”がどんどん遠くなっていき、若い世代を中心に記憶の風化も言われているが、それでも75.3%の人が「絶対に戦争をすべきでない」と答えている。戦争を知らずに平和な場所で生きてきた、それはもっと誇りを持ってもいいのではないか。その上で、改めて平和について考えていきたいと感じた。

 

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