今月のいちおし!!2016年1月

希望ふたたび
阪神・淡路大震災で逝った息子のただ1通の手紙から


著者 加藤りつこ
発行 解放出版社 1,500円+税




田中澄代

 「…私はあなたから多くの羽根をいただいてきました。人を愛すること、、自分を戒めること、人に愛されること……。この20年で、私の翼には立派な羽根がそろってゆきました。そして今、私は、この翼で大空へ翔び立とうとしています。誰よりも高く、強く自在に飛べるこの翼で。…」
 1995年1月17日。阪神・淡路大震災。貴光さんは下宿先の西宮市内のマンションが倒壊し、圧死。21歳の人生を閉じた。
 貴光さんは湾岸戦争が開戦し、連日頻繁に報道される戦争のニュースを機に国連職員を志し、神戸大に進学した。親元を離れるとき、りつこさんのポケットに、母に宛てた1通の手紙をこっそり忍ばせていた。
 その手紙は、後の彼女の生き方を変えるきっかけともなり、一人息子を失い、生きる希望までを失っていた母りつこさんに、ふたたび希望の光を…。
 貴光さんの友人たちや、手紙の報道によって出会っていく人たちによって、考え方やモノの見方を少し変えてみることで、次第に変わっていく様子が描かれている。

 

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