「ぼくは、いつもおこられる。」
妹を泣かせて怒られ、女の子を驚かせて怒られ、友達に先に手を出して怒られて…。お母さんや先生にいつも大目玉をくらっているこんな男の子、いるいる。ついつい「何でおこられるようなことばかりすんだろう?」、「どうして何も言わないの?」なんて思ってしまう事も。
でも、この絵本を読んではっとさせられます。こんな風に思っていたなんて。怒られても言い返さない訳が、お母さんや先生の笑顔が見たいから だなんて・・・。
悔しさをぐっとこらえる横顔が途端にたくましく、愛おしく見えてくるのです。感情のコントロールが下手な子、ついつい怒ってしまうお母さん、男の子が理解できない女の子の為に。子ども達の気持ちを代弁してくれるこんな絵本の大切さを痛感します。
作者は、26年間、小学校の先生でした。この絵本の物語ができたきっかけは、30年ほど前にいた学校でのことでした。7月の七夕集会で子どもたちが短冊に願いごとを書いて、笹飾りを作った中に、「おこだでませんように」との短冊がありました。「おこられませんように」が「おこだでませんように」と一生懸命、一文字一文字書いたことが、伝わってきました。
この子は、きっと、自分がよく怒られていることをわかっている。でもなぜかわからない。自分が楽しかったり、良かれと思ってやったことなのに、怒られてしまう。怒られることをしなければ、その向こうにはお母さんの笑顔や褒めてくれる先生がいる、と自分なりに考えているわけです。それをお母さんや先生に言うのではく、七夕さまへのお願いにした。天に向けての祈りの言葉にしたのです。褒めてほしい心の中の祈りが「おこだでませんように」と。
普段の生活で、忘れていた子どもの思いを伝えてくれる見ごたえのある一冊です。
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