センター職員の今月のいちおし

「されど愛しきお妻様」

「大人の発達障害」の妻と「脳が壊れた」僕の18年間

著者 鈴木 大介
発行 講談社 1,400円+税




衣笠 尚貴

 

 「お妻様」。著者は妻をそう呼ぶ。理由は、“奴は怒らせると怖いというか、むやみにしつこいからである。”「最貧困女子」など社会的困窮者を対象の中心に取材活動を執筆する著者を知っている人も少なくないだろう。
 41歳で脳梗塞に倒れ、その後に経験した高次脳機能障害による様々な困難や苦しみを通して、「大人の発達障害」の妻を理解し家庭生活を変えていくというものである。
 「起きたい時間が起きる時間」。片付かずカオス状態な部屋、夕食を準備しても「チャット」に熱中する、そんなお妻様。イライラし、なぜできないのかと叱責ばかりしてしまう著者。そもそもお妻様は「家事の必要性」を感じていない!?それなら全部自分でやってしまえ、と背負い込んで、抱え込んで、病に倒れ…。はじめて分かるお妻様の生きづらさ。
 
夫婦とはなにか?家族とは、障害とは、理解、平等とはなにか?無数の問いかけが繰り返され、社会や環境の既存の在り方を考察し、従来の定義に疑いが浮かぶ。

 共に生きる人たちと、できるだけ快適に、愉快に暮らすために、今日からできる改革とはなにか、考えさせられる。

 

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