今月のいちおし!!2017年12月

片想い

著者 東野圭吾
発行 文春文庫 900円+税




衣笠尚貴

 年に1回催される大学アメフト部時代の同窓会に出席していた主人公、哲朗(QB(ニックネーム))。彼は帰り道の途中、アメフト部女子マネージャーだった美月に出会う。懐かしい顔。しかしその様子に違和感を感じた哲朗は、美月を自宅に招く。そこで美月はこう言う。「オレは男だったんだ。ずっと前から、QBたちと出会うより、ずっと前から」…。美月は男性の心を持ちながら、女性の体に生まれた、性同一性障害だったのである。
 性同一性障害に、そして社会から排除されることに苦悩する登場人物たち。
 文中の一節を紹介したい。
 
血液型性格診断を信じている人は多い。(中略)しかしそういう人たちでも、日常生活で血液型によって相手を差別するということは殆どない。(中略)ではなぜ多くの人は、性染色体のタイプには縛られるのだろう。XXであろうとXYであろうと、あるいはそれ以外のものであろうと、人間には変わりがないという考え方がなぜできないのだろう。
 私たちが無意識のうちに相手を性別で判断していることはおそらく少なくない。そのことで誰かが苦悩しているならば、その無意識に私たち自身が働きかけなければならないだろう。

 

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