今月のいちおし!2016年11月

やさしい日本語―多文化共生社会へ―

著者 庵功雄
発行 岩波新書 840円+税




田中澄代

 阪神・淡路大震災の時、必要な情報を手に入れられなかった外国人が多かったことから、社会言語学者やNHKのアナウンサーたちによって「やさしい日本語」が研究されていったという。それは、外国籍の人々にも十分理解され、情報共有しやすいように調整された日本語であることで、NHKでは既に、やさしい日本語で記されたウェブニュース“News Web Easy”が提供されている。
 社会的なしくみの完成までに日本語教育にできること、それが「バイパスとしての〈やさしい日本語〉」という考え方、およびその理念にもとづく教材開発、意識レベルの改善などがある。
 著者は、日本は「子どもの権利条約」に批准しているが、外国籍の子どもたちは義務教育の対象ではないことを問題視しており、日本人、外国人を問わず、子どもたちがまっとうに努力すれば、社会的に安定した生活ができるといった社会的流動性が保障されることが、極めて重要な意味を持つという。
 多文化共生社会の実現に向けて、対等に競争できる社会的基盤を保障するための大切なヒントがいくつも提示されている。

 

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