今月のいちおし!7月

さん さん さん

 ~幸せは、いろんなかたちでそこにある~

著者 佐々木志穂美
発行 新風舎1,365円(税込)




小宮山 聖美

 

たいていの親というものは、わが子の幸せを願っている。そして、子どもの成長とともに親になっていくものである。そういう私もご他聞に漏れず、である。 

 著者である佐々木さんは、決して「特別な」親ではない。どこにでもいる3人の子どもの母である。3人の子が障害をもって生まれてきただけである。

 私たち大人は、当然我が子たちより先に生まれ、多くの歳を重ねてきた分、刷り込まれた思い込みや偏見、差別というフィルターを通して物事を判断する傾向を払拭するのが難しい。障害をもって生まれた子どもに対し、「劣っている」と捉える自分自身の差別心を認めることのできない大人が、「かわいそうな子」というレッテルを否応なしにその子に貼り付けてしまうのではないだろうか。そのことが、障害があることを不幸と捉えさせ、生きることを辛く悲しいことにしている。自らの存在を愛することなどできるはずもない。

 佐々木さんは実に明るい。障害を持って生まれた我が子に溢れるほどの愛情と飽くなき好奇心を注ぎ続けている。それは佐々木さん自身が子育てに困ったり迷ったりする日々の中で、共に泣き、共に笑い、時には『だーいじょうぶ』と包み込みながら歩んでくれる人々の、ありのままの彼女と子どもたちを、あるがままに受け止める出会いがあるからなのだと思った。そして彼女は、自らの差別心と向き合い、克服し、自信を持って生きようとする力に変えていったのではないだろうか。

 子育てって、楽しいものだったんだ。改めて思い返した一冊であった。

 

 

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