私のともだち最年長の順子さんから「本を出版した」との案内はがきが届いた。順子さんの家で結婚のお祝いをもらって以来、遠さと忙しさから疎遠になっていた。数年前、たまたま外国から来た子どもたちを支援をする活動が子ども情報研究センターの冊子「はらっぱ」で紹介されていたのをきっかけに、トギレトギレながら交流が再開した。
戦中戦後を生き抜き現在に至るまでの、人生の場面場面の思い出が小説の形をとって綴られている。自分にとっての戦争、不法滞在になってしまった親子の在留資格獲得までの闘い、アイデンティティに心ゆれる在日の中学生、日本語教室存続の交渉。当たり前に生きてきた人生だからこそ、日常のささいなわがままや自分の思いもありのままに描かれる中で、完ぺきではありえない人間が、それでもダレかを大切に生きようとしている。私もそうだ。理想だけでは生きていけない。でも、今できることを葛藤しながら、何とか毎日過ごしている。それが「生きている」ことなんだと思った。