今月のいちおし!!2012年9月

コペルニクスの鏡

著者 清水 博
発行 平凡社 1,600円+税




田川朋博
 

 昨年311日に起きた東日本大震災。多くの人が突然に、そして、不条理に大切な人をなくし、今も心に大きな傷を負っている。そんな傷ついた心をどうすれば癒すことができるだろうか。著者はそんな思いでこの本を執筆されたそうです。

 「不思議の森」の近くに、幼いときに両親を失って祖父と二人で暮らす少女がいました。ある日、少女はその森の中で変わったカラスたちと出会います。カラスたちは自分たちを「人間の〈いのち〉の運び屋」だと言い、亡くなった人から外した「コペルニクスの鏡」を新しく生まれる人の首にかけるため、きれいに修理しているのだと少女に伝えます。そして、「コペルニクスの鏡」のことを知らない少女に、「生きていく」とはどういうことか、生と死とはどういうことかなど、いろいろなことを伝えていきます。

 カラスたちが少女にいのちの「ほんとの、ほんとの、ほんとのこと」を伝えるという形で書かれているため、比較的読みやすく感じられました。でも、子ども向けの本なのかなと油断していると、「いのちの地動説」「いのちの天動説」「いのちの予贈循環」などなど、一見すると「?」となるいろんな言葉が出てくる哲学物語です。「生きている」ことと「生きていく」ことの違い、「生きる場」を持つことに大切さ、1回読んだだけではなかなか理解できませんでしたが、東日本大震災以降言われてきた「絆」「つながり」ということについて改めて考えさせられる本でした。

 人権とっとり講座最終日の10月16日(火)には、著者の清水博さんにお越しいただきます。ぜひご参加ください。

 

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