今月のいちおし!!2013年1月

3.11原発震災 福島住民の証言

ロシナンテ社 編
発行 解放出版社 1,200円+税




田川朋博

 

今も鮮明にテレビのニュース映像が目に焼き付いているあの大震災から、もう2年がたとうとしています。今なおいろいろな形でニュースに取り上げられていますが、大きな問題として原発の問題があるのだと思います。

 振り返ってみると、あの津波の映像があまりにも衝撃的だったこと、そして、だんだんと明らかになっていく被害状況やどんどん多くなっていく死者行方不明者数など、情報量が多く、原発関連のニュースも多く流されてはいましたが、そのニュースを鵜呑みにし、自分自身でうまくとらえきれていなかったのではないかと思います。

 本書は、福島で被災した人々はあの震災以降、どのように生きてきたのか、それぞれの言葉で綴られています。農業を営んでいたが土地を離れざるを得なかった人、それでもとどまり畑を耕し続ける人、原発と向き合うためにネットワークを立ち上げた人、市議会議員…、いろいろな立場で原発と向き合っています。共通して言えるのは、あの事故によって大きく人生を狂わされたこと。農業を営んでいた村上さんは「あ、ぼくはもう絶対に飯舘村には帰れないんだ」と感じ、被災者の支援をしながら新たな人生を模索しています。畑を耕し続けている菅野さんは、「ものをつくってこそ農民、闘ってこそ農民」の思いで、仲間の農家の人たちに作付をするように呼びかけ続けています。それぞれの立場で前を向いて歩いて行かざるを得ない状況がうかがえます。

 震災以降、これからの原発をどうしていくのかということがいろいろなところで議論され、先の衆議院選挙でも大きく取り上げられました。これからの原発を考えることは、これからの社会をどのように作り上げていくのかということに大きくかかわる問題だと思います。原発と向き合わざるを得なかった人々、それらの人々の声を聞くことこそ、この問題を考える第1歩ではないかと思いました。

 

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